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乳首と花

story

 

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<お題>誕生日・甘いもの・妖精

 

 ュークリームからカスタードだけをゆびですくいとって、けんたろうくんの乳首に塗りたくるとそれを舐める。

 本当なら今日は生理になるはずだったけれど祈りが通じたのか、9日ぶりの逢瀬はホテルでのスイートなものになった。

 普段から彼ぴっぴの乳首を舐めることは大好きで、つねづね「この乳首美味しい」と評してきたわたしだけれど、そこへ大好きなカスタードクリームを塗ることで美味しさが二乗、三乗とされ口内を中心とした五感は至福を極めようとしていた。

 これは男体盛りの類いに入るのだろうか。

 わたしは常々、女体盛りの何が楽しいのか分からないでいたけれど、なるほど、もしもこれがそういうことならば、こんなに楽しく美味なものはない。

 舌先で感じるのは甘く柔らかなカスタードクリームと硬くたった乳首。それは即ち、愛する人の性感の昂ぶりと、この街で二番目に濃厚なカスタードクリームだ。

左乳首のカスタードクリームを舐めながら、右乳首にクリームを塗りたくる。

指先で乳首を弄んでいるうちに、わたしの指の腹は性感帯として開いて行き、びりびりと痺れを憶えた。愛撫しているつもりが、いつしか愛撫されているようになっていた。

 夢中になって舐めているうちに、指先はおろか、わたしは顔中カスタードクリームまみれになってしまった。けれど、これでもまだまだ全然舐めたりない。もっともっと彼をクリームまみれにしてひたすらに舐め倒したい。せめてこのシュークリームの一個分くらいは。

本気を出そうと思ったわたしはTシャツを脱いだ。UTである。リバティプリントである。これは1000円ほどしかしなかった上に彼が「かわいいじゃん」と言ったことが購入の決め手になったものだ。考えてみれば、今日のスカートは彼に買ってもらったものだし、人差し指のルビーの指輪も彼にもらったものだし、わたしの日常は、もはや彼を見つけないことの方が困難になっている。

「そのブラジャー、嫌いじゃないよ」

下着姿のわたしに彼が言った。そうなんだ、とわたしは答える。彼は常々下着には興味がないと云っていたので、それは少し意外な発言だった。

 今日の下着は白のレースで新品だ。今日はわたしの誕生日だから、気持ちも新たにしたくて純白の新しい下着でこの歳を始めようと決めていたのだ。

 わたしはスカートを脱いでブラジャーを取ると、再び胸元へ顔を埋めた。まるで犬が、お皿に顔を埋めてがっつくように。わたしは舌を大きく出してれろんれろんに舐めたり、鼻息荒く一心不乱に小さな乳首に吸い付いたりする。もはやカスタードは関係なかった。ひたすらに乳首が美味しかった。

 例えば、古くはテトリスぷよぷよから、今ならキャンディークラッシュまで、パズルゲームをしているときはある種の集中力がK点を超えることがあるようで、調子のよい時ほど頭の片隅では答えのない禅問答のようなものが始まり、わたしの思考は異様に冴え渡って行くのである。

 この可愛らしい乳首を舐めているうちに、丁度同じ状態になりつつあるようで、わたしの脳裏には今日彼からもらった花束のことが思い出される。

 視界には今、彼の白い胸板しかないけれど、頭の片隅では同時に、背後にピンク色の薔薇の花や、丸っこい緑の植物を感じていた。

「彼ぴっぴの乳首を舐めることが出来て満足?」花がわたしの脳内に直接話し掛ける。

「うん」わたしも脳内で答える。

「今までの人はみんな乳首触られるの嫌がってたもんね」「そうなの、だから今の彼は相性いいなって」「たしかに」「今日は誕生日だね」「そう」「どう?」「最高」「何で?」「サプライズでお花もらったし!」「あたしのことだ」「そうだ、お前だ〜っ」とここでわたしは乳首にきゅーっと吸い付く。彼は小さなうめき声を上げて、わたしの頭を自分の胸へと抑えつけた。こういうのは嫌いじゃない。わたしは彼の求めに応じて、より一層強く乳首を吸い上げる。

 シュークリームのクリームはまだまだたっぷり残っていて、次はどこへ塗ろうか考えていると、また花が話しかけてきた。

「下の方は? 絶対美味しいに決まってるよ」「だよね」「だってもう、しょっぱいお汁が沢山でてるよ」「甘みと塩味のコラボ」「美味しくないわけがない!」

 花と共にそう結論付けたわたしだけど、でもやっぱりもう少し、ゆっくり楽しむことにした。久しぶりに会ったのだから、出来るだけ多く、けんたろうくんを感じていたい。

  わたしは五本の指をシュークリームの中につっこむと指をクリームまみれにした。

 そしてその指を、けんたろうくんの口の中へ入れる。

 彼は期待通りに、わたしの指を一度派手な唾液音を響かせながらクリームをしゃぶり取ると、今度は丹念に指を一本ずつ舐め始めた。

「美味しいでしょ?」

わたしの言葉に、彼は目を細めて頷いた。

彼が指を舐めている間、わたしは次の行為をどうするべきか逡巡する。

けれども花は何も言わない。

眠ってしまったのだろうか、それとも飽きてしまったのだろうか。

わたしはもう一度、彼の胸元に顔を埋める。

室内はわたしと彼の擦れ合う音しか聞こえなくて、いつしかわたしの中もその音でいっぱいになっていった。

 

<了>